元葬儀屋が暇なときに書く葬儀とか終活のブログ

葬儀のマナーとか調べればいくらでも出る記事はありません。

【就活・就職】納棺師(おくりびと)は実際にどんな職場なの?

納棺師(のうかんし)は、映画「おくりびと」で一般にも知られるようになりました。

現在では主にご遺体の基本処置からメイク・着せ替え・湯灌・修復・納棺を行います。

特別な資格は一切必要ありません。

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納棺師の仕事内容や、調べればたくさん出てきますので、ここでは実際の納棺師という仕事の流れであったり、就労環境を把握していただきたいと思います。

 

 

どのように仕事が発生するのか

 

基本的なスタンスとしては葬儀社の依頼です。

仕事発生のパターンとしては主に3パターンあります。

 

①葬儀を受注した葬儀屋が納棺作業ができないパターン

ごく小規模な葬儀社ではありがちですが、基本的に納棺作業ができないという葬儀社も存在します。また、納棺師によるメイクや納棺を基本プランに組み込んでいる葬儀社もあります。

葬儀施行以外は全て外注している葬儀社も多くいますので、こういった業者の仕事はそれなりに入ります。

 

②遺族が強く希望するパターン

「最期はしっかりと送り出したい」「華やかな人だったので綺麗にしてあげたい」

「以前の葬儀の時は納棺式をやった」などなど。

洋服や、仏衣などに着せ替えをし、生前の姿に近いメイクを遺族の前で行うパフォーマンスの意味合いが高いパターンです。

ここでいい仕事をすれば、遺族の記憶にも残り納棺師としてはとても「やりがい」を感じられる場面になることでしょう。

またリピートにも繋がりやすくなりますので、葬儀社からも喜ばれます。

 

③ご遺体の状態が悪い・修復が必要なパターン

死因にもよるところはありますが、顔に大きな傷があるときに傷を埋めたりして、生前の姿に近づける作業です。

修復作業は事件や事故の場合も多いので、遺族は非常にナーバスな状態です。

作業自体を見せることはあまりありませんが、中には立ち合いたいと強く希望される方もいますので、言葉選びから所作まであらゆる面で気を使う必要があります。

 

大体はこんなパターンでしょう。

また、納棺師による納棺というのは葬儀に関わる儀式の中でとても印象に残る場面です。

遺族にあったときに強く記憶に残っている場面を聞くと、大半が「湯灌」「メイク」「納棺式」と答えていました。



これからの納棺師の仕事について

 

少しお金の話をしてしまうと、冠婚葬祭業界はネット業者による価格破壊が進んでいる最中です。

実際に格安葬儀をあげている人も多くなってきているため、業界的に少しづつ影響が出てきています。

 

「仕事は増えているのに、売り上げが下がっている」

こんな状態の葬儀社が沢山います。

 

そこで、少しでも単価を上げるためだったり、単価回復をするために取り入れていきやすいサービスとして

「湯灌」「納棺式」を取り入れていく方式になっていくのではないかと考えます。

 

何年も葬儀社をしていく中で、確実に顧客満足度に繋がっていると感じる瞬間は「納棺式」だからです。

 

多くの葬儀社はこんなこと思いついていると思いますので、単純に仕事は増えていくでしょう。

 

※実際に私が納棺師として働いていた会社はコロナ禍で売り上げを伸ばしています。

 

ただ仕事が増えていっても1日に回れる数は限られてきます。

そのため、素早く丁寧に仕事をしていかないといけない流れになってきています。

1日に何軒回れるかが稼げるか稼げないかのポイントです。

湯灌だと1日に3件、メイクだと5件ぐらいのペースでコンスタントに回れると件数手当なども付いてきます。

 

また、都心部では火葬場不足や墓不足と今の時点で言われています。

これにより、葬儀までの日程が更に延びるということが考えられますので、より確実なご遺体保全の方法を葬儀社はこれから強いられてきます。

 

葬儀まで綺麗に故人様を保ちます」といったアプローチで、

納棺師による処置や、エンバーミングなどを勧めることもしやすくなってきますし、需要も高まっていくはずです。



どんな会社を選べばよいのか

 

まず当たり前のことですが、従業員数が少なすぎず、定着率の比較的高い会社を選ぶこと。

 

それから業界全体にいえることですが、ホワイトである可能性はきわめて低いです。

上場していればほぼ確実に休みは取れますので安心ですが、私が知っている中で休みもしっかり取れて、残業も少ない会社は納棺師業界では1社しか知りません。

 

少しづつ改善されてはいますが、世間の流れに乗るのが10年遅い業界でありますのでまだまだ昭和脳な会社が多いです。

葬祭業のwebページなどを見てみるとなんとなく古臭さが分かると思います。

 

信じられないと思いますが、webページ自体無い会社もこの業界ではあります。そういった会社はやめておいた方が無難です。



「納棺師」から構成される納棺(湯灌)専門の会社を選択する

 

一般的に葬儀社はご遺体の鼻や口などの綿詰めや、メイク・納棺などの基本的な作業はほとんどの場合できます。

1人葬儀社や小規模の葬儀社の場合はそこまで手が回らず納棺関係はすべて外注しているところも多くあります。

また、大きな葬儀社になるほど分業化(納棺の技術がない人が増える)が進み、納棺師の需要が高まります。

 

ただ、「納棺師」として「葬儀社」に就職するということは、ほぼ不可能です。

葬儀の仕事もやりながらの納棺師という立場になることがほとんどです。

 

納棺師の会社で仕事をするうちに腕を見込まれ葬儀社にスカウトされていく人も多くいますが、大体辞めて納棺師に戻っています。

 

どちらの技術も中途半端になってしまうのです。自ら器用貧乏になりにいく必要はありません。



「納棺師」から構成される納棺(湯灌)会社を選ぶ理由としては、ご遺体処置を専門に行っている会社の技術力は確かなものですし、色々なケースの仕事を経験できる可能性がより高いという点で転職の際にも有利に働くことが多いからです。

 

あと注意点としては、未経験の人は新しい会社はやめておきましょう

大体の会社がすぐ潰れるので、自身のキャリア形成の為にも長く続いている会社を選びましょう。

また新しい会社は社員が比較的若く、社内のルールも定まっていない事が多いためサービス業という業態の中では働きにくさをじることが多いかと思います。

※これは念のためです。やり手の会社もあるかもしれませんが、未経験者には業界内の情報が何もないのでお勧めはしません。

 

例えば、

 

私の知り合いにパワハラで前職場をクビになり、某エリアでは村八分状態になっている人がいるのですが、先日葬儀社を立ち上げたそうです。

 

葬儀社や納棺業者など葬祭に関わる仕事は開業に必要な資格がありませんので誰でも始められます。

 

こんな業者も絶賛求人中なのです。

 

 

 

就職難易度について

 

葬祭関連の会社に関しては、求人を出しても応募が全然来ない会社がほとんどです。中堅ぐらいのレベルの会社でもなかなかいい人は来ません。

 

そのため、ある程度若ければ簡単に就職できる可能性があります。

履歴書の書き方など、基本的なことができれば大体OKです。超大手を除けば就職のハードルは非常に低いです。

 

就業環境が特殊であるためついてこれない人は辞めていく。

という諦めにも近い考え方が全体的にあります。

 

ちなみに、ご遺体への化粧は普段の化粧とは全く勝手が違います。

イメージとしては舞台メイクが近いかと思います。

技術的にはメイクというよりも、塗装です。油絵をやったことがある人は上手いかもしれません。

 

どんな人が納棺師に向いているのか

 

ホスピタリティと体力が一番重要です。

一日中現場から現場へ飛び回る日もあります。

突発で仕事が入るときが多いので、いくら暇でも電話番で出勤なんてことも。

また会社によりますが早朝・深夜業務も交代制であります。

 

納棺師は女性比率が高い業界でもありますので、女性だからと言って業務内容が緩和されるということは一切ありません。

 

沢山の納棺道具やメイク道具を持って車で現場から現場へ飛び回り、ご遺体を移動させたりと純粋にパワーのいる仕事です。

非力な人やコミュニケーション能力が低い人は苦労する場面も多いかもしれません。

あと、運転が下手だとつらいと思います。完全に体育会系です。

 

依頼主は葬儀社ですが、実際は遺族の前にたって納棺に関わる作業をするわけです。

遺族にとっては一生に一度あるか無いかのイベントですので、喜びや感動を与えられるように一生懸命行動できる人が向いています。

 

どちらかというとパフォーマー向きの職業であると見ていて感じる部分もありますが、基本的に1人で現場に入ることが多いので長い目で見ると、自分自身をマネジメントできる人が輝く職業なのではないかと思います。

 

ただ、いくら現場を頑張ってもSNSやクチコミで納棺師個人の技術が伝わるということはかなり少ないのが現状です。

時間はかかるでしょうが1件、1件の現場を丁寧にやっていけば結果はついてくる仕事であることは確かです。


さいごに

 

最近の葬儀社はまともな納棺作業ができない会社も少なくありません。

この業界はまだまだ右肩上がりですから、異業界からの参入というのも沢山あります。日々新しい業者が発生しては消えていく面白い業界でもあります。

その中でも「納棺師」という仕事はかなり体力的にもメンタル的にもつらい場面がある業種だとは思いますが、お客様に感謝されることで達成感ややりがいを感じられる素晴らしい職業です。

 

色々と厳しいことを書きましたが、決して華やかな業界ではないということを感じていただければ冠婚葬祭業界に飛び込んでもやっていけるでしょう。